「生物産業界を担うプロフェッショナル育成」:九州大学大学院生物資源環境科学府

お知らせ

コア共通科目・生物産業創成学特論(少人数セミナー)
各セミナー概要

「環境評価の政策的利用」

 私たちが日常売り買いしている市場財は、価格が存在するために、それらの需要と供給が価格によって自動的に調整され、効率的に需給のバランスがとれる仕組みになっている。しかしながら、私たちが生きて行く上で不可欠の空気や天然の水、自然環境、あるいは美しい景観などは、通常、価格が存在せず、市場で売買されることがないために、需要と供給が調整されない。そのため、政策的介入がなければ、過大に利用されて自然が破壊され、生物多様性は激減し、廃棄物の捨て場となり、深刻な環境汚染が発生してしまう。

 そこで、本セミナーでは、環境財について、なぜ価格を持たないのか、その経済的価値をいかに評価するのか、評価された経済的価値をどのように政策に利用するのかといったテーマについて、ゼミ形式で講義し、環境政策の基本的な枠組みについて理解を深める。

「植物バイオテクノロジーと産業」

 植物バイオというと、最近話題になっている遺伝子組み換え(GM: genetic modified)植物がまず頭に浮かぶが、人類は数千年前から、食料、香料、医薬品などの様々な形で植物を産業に利用してきた。

 本セミナーでは、歯ブラシやタイヤなど、普段意識せずに使用している身の回りの植物バイオ産物とその材料などの紹介とともに、GM植物などのゲノム情報を活用した最近の植物バイオ産業を概説する。過去の植物バイオ産業がもたらした正と負の遺産も紹介したい。また、現在、植物バイオ産業が抱えている問題、これから産業化される可能性のある植物バイオ産業について議論したい。最終的には、各自が興味のある今後の植物バイオ産業のシミュレーションを行ってもらう。

「未来の牛肉生産システム、IT牧場構想とニッチマーケティングの可能性を探る」

 わが国の畜産は海外からの輸入飼料に過度に依存している。しかし、昨今の飼料価格の高騰により、わが国の畜産業は深刻なダメージを受けている。一方で、畜産は環境に大きな負荷をかける産業としてとらえられている。現在は、現状の畜産業の維持と生産システムにおける環境への影響に関しての調整を、行政機関が取り繕っている状況である。しかし、今後のTPPも踏まえ、そこにはクリアしなければならない問題が山積みされている。

 今こそ、大学等のアカデミアが中心となり、農業における“自然―生産施術―環境維持―良質生産物―マーケティング”といった基本軸を再構築して、新たなデザイン・イン型の畜産システムを構築する必要がある。本セミナーでは、高原農業実験実習場にて畜産の現状とフィールドワークを体で体験し、本年度は、特にIT牧場構想を中心に、さらにニッチマーケティングを含めて食肉関連企業のあり方を考え議論する。

* 持参物 *
・汚れてもいい服
・長靴(あれば)

「酵素反応の数理的解析」

 バイオテクノロジーには酵素タンパク質が様々な態様で利用される。そこで、酵素が触媒する反応のモデル化とその解析が求められる。実際の解析には、バイオサイエンスのみならず、シミュレーションや最適化の方法、あるいは、プログラミング等について数理科学的知識を必要とする。本セミナーでは、多糖分解酵素の反応解析を例にとり、多額の投資を必要とせず、パソコンを用いて行う方法の理論と実際について概説する。

 本セミナーの目標は、この分野に親しみのない受講者であっても、数理的解析の方法論の全体像を理解できるようになることである。

<参考書>
○「JAVAで学ぶシミュレーションの基礎」峯村吉泰、森北出版
○「JAVAによる応用数値計算」赤間世紀、技報堂出版
○「JAVAで学ぶ数値計算」吉川 浩、科学技術出版
○「Cによる科学技術計算」小池慎一、CQ出版社
○「科学技術計算ハンドブック」戸川隼人、サイエンス社

「産業化に向けた物質・材料設計」

 本セミナーでは、農学系の院生が広く化学・物質材料系企業就職にも対応できるように、以下の観点からゼミ形式で講義が進行する。

1.大学の研究と企業における研究の違いについて
2.大学で研究生活を行ってきた人が企業にいて研究を行う場合には
3.マンツーマン質疑演習

講義日程は、受講者との相談の上決定する。5人以内が望ましい。

「食品の物性」

 消費者が食品を選ぶ際に、味、香りは重要な因子であることは良く知られているが、それ以外にも食品の物性は食品選択に大きな影響を与えている。特に近年では、高齢化に伴う咀嚼・嚥下困難者の増加や食品のソフト化による咀嚼能力の低下などが問題となっており、食品関連学会でも食品の物性に関する研究発表が多く行なわれている。

 本講義では、食品の物性と消費者の嗜好との関係について、物性の測定方法について、最後に食品物性の改質について概説する。

「産学連携を考える」

 国立大学等については、国立大学法人法等関係 6 法に基づき、平成 16 年 4 月から法人化しています。国立大学法人法においても産学官連携は国立大学法人の重要な役割の一つとして位置付けられています。国立大学法人法では TLO 等を想定した出資の制度が盛り込まれているほか、人事・会計等における様々な規制も大幅に緩和され、法人化によって国立大学における産学官連携がより活性化することが期待されています。法人化後は、各国立大学法人等が自らの個性・特色を反映しつつ柔軟な産学官連携・知的財産の取扱のルールを定め、産学官連携に取組んでいます。

このような状況下、大学研究の側から産学連携を考えてみたいと思います。

「減農薬農産物とは何か」

 食の安心・安全」が消費者の強い関心事になり、これからの農業には、いかに化学農薬の使用回数を軽減するかが求められている。しかし、化学農薬の使用回数の軽減は現実的にはそう簡単なことではない。例えば、見かけが立派で美味しくて大きな果物や野菜を季節外れに大量に生産しようとすれば、害虫や病気の防除は不可欠である。

 このセミナーでは、有機農産物や減農薬農産物とは何かという定義から始まり、現実の農業で、化学農薬がどのように使われているかを解説した後、具体的な減農薬技術について解説する。その後、消費者をも含めて、「食の安心・安全」をわれわれがどのよう理解すべきかを議論する。


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