「生物産業界を担うプロフェッショナル育成」:九州大学大学院生物資源環境科学府

25 m プール中の 1 滴の農薬を探る

株式会社キューサイ分析研究所での研修を終えて

修士 1 年 江崎 加代子



私は残留農薬分析で国内トップクラスを誇る株式会社キューサイ分析研究所(福岡県宗像市)でインターンシップをさせていただきました。この研究所は「う~、まずいっ。もう一杯!」の CM で有名になった青汁メーカー・キューサイが 2003 年 1 月に設立した分析会社です。2 週間という期間で残留農薬分析の背景や残留農薬分析の実際(徹底したサンプル管理、多様なサンプルに適した個々の処理など)を学び、分析研究所で働くということを体験してきました。


残留農薬分析の背景

農薬は農作物を害する菌、線虫、ダニ、昆虫その他の動植物又はウイルスの防除及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられます。しかし、その作用を発揮した後ただちに消失するというわけではありません。作物に付着した農薬が収穫された農作物に残り、これを食べたり、家畜の飼料として利用されミルクや食肉を通して人の口に入ることがあります。このように農薬を使用した結果、作物などに残った農薬を残留農薬といいます。

日本の食料自給率は低く、食糧のほとんどを海外に依存しています。そんな状況の中、輸入野菜から基準値を大きく上回る残留農薬が検出される事件が起きました。また、国内産の農産物でも無登録農薬が使われていることが発覚し、農薬に対して消費者が大きな不安を抱くようになりました。

食品衛生法の規制では食品から残留農薬が未設定の農薬等が検出されても、その食品の販売を禁止するなどの措置が行えませんでした。しかし、平成 18 年に食品衛生法が改正され、すべての農薬・動植物用医薬品・飼料添加物について加工品を含むすべての食品が規制対象となり、基準値を超えた食品の流通を原則禁止するポジティブリスト制度が施行されました。これにより、検査対象農薬が増加し、より迅速・高精度の一斉分析が求められるようになりました。キューサイ分析研究所では 25 mプールの水量に落とされた 1 滴の農薬をも逃さぬ感度で、信頼性の高い分析結果を提供できるように日々研究が行われています。


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平成 18 年の食品衛生法の改正は画期的なものであり、我々一般消費者に対しては心強いものです。しかし、ポジティブリストの中には、いまだ分析法が確立されていないものも含まれ、科学技術インフラの整備前に法が施行されたという側面もあります。そのような状況下で、キューサイ分析研究所では、責任を持ってデータを報告するための日々の努力が続けられています。自ら出すデータへの思いという点で、格別のものを感じてきたのではないですか。この経験・気づきをこれからの研究者人生に活かしてもらいたいと思います。

生物産業創成学コース支援室長 割石






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